和菓子は職人が創意工夫を凝らし、常に新しいものに取り組んでいます。その一方で、きんつばやみつ豆、大福などの伝統的な和菓子も大切にしています。このコラムでは、昔から守られてきた定番の和菓子を紹介しながら、和菓子の魅力を再確認していきましょう。
きんつば
そもそもきんつばってどんなお菓子?
「きんつば」って名前はよく聞くけど実はどんなものかよく分からない、そんな人は少なくありません。きんつばは製造元による違いはありますが、多くは四角く形作ったあんこを、薄めの衣で包んで焼き上げた和菓子です。
名前から形が想像しにくい、と思う人も多いかもしれませんが、名前の由来はサムライが持っていた日本刀の持ち手と刃の間にある鍔(つば)が由来となっています。
「きんつば」は、最初は「ぎんつば」だった
日本刀のつばは丸みがあって銀色のものが多いですが、和菓子のきんつばも日本刀にちなんで作られた和菓子なので、最初は丸い形状で「ぎんつば」と呼ばれていました。
きんつばが生まれたのは江戸時代中期の京都ですが、江戸に伝わった際に、「銀より金のほうが、景気がいいだろう」という理由できんつばと呼ばれるようになり、その名前が主流になりました。
この頃は丸型が一般的でしたが、明治になって神戸の和菓子屋が四角にして量的にもたくさん提供できるようになり、それが広まったようです。
「きんつばって高カロリー?」と思っている人に
きんつばはあんこの塊なのでカロリーが非常に高いように感じるかもしれません。しかし、実は1個あたりのカロリーは約172kcalで、平均的なショートケーキのカロリーが約350kcalであることから、半分程度のカロリーであることが分かります。また、ご飯一杯のカロリーは約250kcalなので、思うほど高くないというのが現実です。
そしてあんこの主成分である小豆には食物繊維が多く、満腹感があるので食べ過ぎを防いでくれます。また整腸作用や便秘の解消が期待でき、小豆に含まれるポリフェノールの抗酸化作用がアンチエイジングをもたらしてくれますから、美容的にも優れた食品といえます。
みつ豆
「みつ豆」と「あんみつ」って同じもの?
「みつ豆」と「あんみつ」は同じように使われているケースもありますが、本来は「みつ豆」のバリエーションの一つが「あんみつ」です。
みつ豆とあんみつの違いを説明しましょう。みつ豆は茹でた赤エンドウ豆やミカン、さくらんぼ、寒天などに黒蜜や白蜜をかけたものです。
一方、あんみつは上記のみつ豆にあんこが入ったものをいいます。つまりあんこの有無がみつ豆とあんみつの違い、といえば分かりやすいでしょう。「みつ豆」のほうが広いカテゴリーなのであんこが入っているみつ豆も数多くあります。
夏にさっぱり低カロリー
常温でも美味しいみつ豆ですが、夏なら冷やしてさっぱりいただくのも風流です。
ちなみに、あんが乗ったみつ豆(いわゆるあんみつ)の100gあたりのカロリーは約85kcal、一般的なショートケーキは100gあたり約350kcalですから決して高カロリーではありません
大福
大福のルーツを知ろう
大福はあんこを餅で包んだメジャーな和菓子ですが、意外と知られていないことに、初期には塩味が強かったことが記録されています。
室町時代の後期、ふっくらした丸みが鶉(うずら)を想像させることから、「鶉餅(うずらもち)」と呼ばれていましたが、「腹太餅(はらぶともち)」ともいわれていました。現代だと流行りそうにないネーミングですが、当時はお腹いっぱいになって腹持ちも良い食材として人気があったようです。
江戸時代に入ってからの1771年、8代将軍吉宗の時代に、おたよという女性によってそれまで塩味だったものが、砂糖味の腹太餅として売り出されます。サイズ的にも大きかったことで、満腹感が喜ばれ大ヒットしました。
大福の健康効果
ここまで「腹太」などの言葉が出たため、「大福ってやっぱり太る?」と気になっている方も多いでしょう。しかしこれはお腹いっぱい食べられなかった時代のセールスワードです。
実際には大福1個あたりのカロリーは約250kcal、低いわけではありませんがショートケーキの約350kcalに比べれば低いですし、和菓子特有のあんこの健康効果も期待できます。
さらにあまり知られていませんが、大福にはモリブデンという成分が含まれています。モリブデンは脂肪や糖分、タンパク質をエネルギーに変える酵素を助ける役割を持っています。そのため免疫力がアップし、女性に起こりやすい貧血を防止する効果もあります。
まとめ
きんつば、みつ豆、大福などの伝統的な和菓子の歴史やカロリーなど、意外と知られていない部分を解説しました。
宮崎県の和菓子屋、「桐木神楽堂」ではここで紹介した和菓子を、伝統の技で作成しています。和菓子は日本人の趣向に合うものでありながら、世界にも認められているワールドスイーツです。この機会に、ぜひ当店の創意工夫を凝らした伝統の和菓子をご賞味ください。