落とし文

この季節のお菓子に「落とし文」という銘のの上生菓子があります。若葉の美しいこの時期、ちょうど茶道の世界では(畳の中に掘ったかまど)から風炉(畳の上に置くかまど)へと道具やしつらえも変わります。そんな初風炉の茶事でも好まれる「落とし文」とはどんな意味があるのでしょう。

若葉の時期は昆虫にとっても新しい産卵の時期。オトシブミという昆虫は柔らかい若葉に卵を産み付け葉っぱをまるでゆりかごのようにくるっと巻いて地面に落とすのです。その様子はまるで密かに書き落とした恋文のよう、、そこからの「落とし文」という和菓子の銘です。濃い緑の煉切に葉脈を型取り中にこし餡を包み外には卵を表した白い煉切の玉。

和菓子には季節があります。和菓子には物語があります。桐木神楽堂では目と食感と味、香りそして菓銘を聞いて和菓子を感じていただきたいと思っています。